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アラン・ボノール「光の礼讃」

2022.08.06 アーティストについて

 

こんにちは、江夏画廊の江夏大樹です。

今日はフランスの画家、アラン・ボノールさんについてお話ししたいと思います。

 

私は初めて会う画家さんとは、最初にかなり長いこと話しをしますが

話すほどに、とても素晴らしいアーティストだと感じたお一人でした。

 

1941年、フランスのリモージュご出身の画家。

幼少期は特に芸術に関心があったわけではなく

18歳の頃、大学入試前に大病をしたことがきっかけで

2ヶ月間の養生を余儀なくされたそうです。

精神的にかなり追いつめられていたそうですが

その時に母親が画材をプレゼントしてくれたそうで

それがきっかけで、絵を描き始めたそうです。

 

同じ頃に、今度は父親がフランスの有名な彫刻家の作品を見せてくれ

実際にその彫刻家に彼の作品を見せました。

その彫刻家はすぐに才能を感じたのか

自分のもとでデッサンを学ぶよう彼を導きました。

すぐに油絵にも着手し、わずか1年で地元の個展で油絵が2点売れました。

 

その結果を父親がみて

「この子はこの道に進むのがいいのではないだろうか・・・」

と感じ、画家としての人生を後押ししてくれました。

その後さらに個展を繰り返し、ついにはフランスの元首相

アルベール・サロー氏の目にとまり、彼が一気にコレクションを始めました。

 

ボノール画伯が、当時サロー氏の家に招待されると

ピカソ、ユトリロなど、多くの名画がコレクションされていたそうです。

サロー氏はエコール・デ・ボザール(パリの国立美術学校)の校長を知っていたので

そこでさらに腕を磨くよう、ボノール先生の父親を説得しました。

 

ボザールでは3年の研鑽ののち、優秀者に送られる奨学金制度

ローマ賞まで受賞し、イタリア留学まで果たしました。

その後は教員となり、10年前に退職するまで、多くの美術学生を導いてきました。

私は、口数がけっして多くはないボノール先生に、大切にしていることを聞いてみました。

 

・絵画は人とコミュニケーションをするための静かな手段

・自分が何者であるかを知るための道(その道に終わりはありません)

・名誉ではなく、描くことそのものが好きである

・周りで悲しみや不幸があろうとも救われる

・自然が師である

 

というような、さまざまなことを語ってくださいました。

 

何よりも、見た人が、絵について、質問をしてくれたり

語ってくれる瞬間がとても嬉しいそうです。

そのボノール先生は、昔から日本が大好きで

尊敬の念を持ち、見てくれています。

フランスと日本の自然観の違いや、日本の精神性について

数多くの興味深いお話を聞きました。

 

日本において今でも忘れられないエピソードとして・・・

ある日、日本の個展会場において、車椅子のご婦人が

長いこと彼の絵を見つめていたそうです。

あまりにも長い時間そこにとどまっていたので、スタッフも声をかけ

先生といろいろとコミュニケーションをとれるよう、計らいました。

 

ご婦人は

「また明日、夫とともに参ります」

と言って、その日は帰られました。

 

翌日、ご主人とともにあらわれて、またいろいろとお話しされたそうです。

ご主人は、ボノール先生に

「妻のあんな幸せそうな顔は、長いこと見ていませんでした。

夢に出るくらいに語り続けるのです。」

とおっしゃられて、涙ながらのその姿がとても幸せそうだったとのこと。

このご主人の言葉が、とても大きな勇気をもたらしてくれました。

ボノール先生は、ご婦人に

「あなたに出会えて嬉しかった」

とお伝えしました。

 

画家は、感受性が高いがうえ、時にはプレッシャーに

押しつぶされそうになることがあります。

それでも、この時の出会いのように、たった一人の人であっても

自分の絵画が幸せをもたらすのであれば、たとえ何があろうとも描き続けよう

とあらためて思いなおしたそうです。

 

私は、このお話を聞いたとき、その車いすの女性の心を救うとともに

ボノール先生ご自身の心も救われたのだろうか、と感じました。

いま、ボノール先生は、将来のための本を書いているそうです。

谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」へのオマージュとして

光の礼讃をテーマにしています。

 

光を追い続ける印象派画家。彼が辿り着く光の境地はどんなものでしょう。

いつか来る、彼の本の到着をとても楽しみにしています。

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〒106-0041
東京都港区麻布台3-1-5 日ノ樹ビル302

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