誰もが特別なものを持っている
2022.09.02 江夏コラム
こんにちは。江夏画廊の江夏大樹です。
今回は、英国ベストセラー画家のマッケンジー・ソープ画伯の
ある日本におけるワークショップでのお話しです。
ソープさんは、長年にわたり1,000回以上
世界各国でワークショップをしています。
下は2~3歳から、上は100歳近くまで。
場所もギャラリーだけではなく、アボリジニの学校や
受刑者たちがいる刑務所など、本当にいろいろです。
アートセラピー、心理学などに基づき
参加者に応じたさまざまなアプローチをされます。
そのワークショップでは、15名の子どもたちが参加しました。
さまざまな困難を抱える子たちが多かったのですが
その中で一人、とても目を引く少女がいました。
うつむき気味で、あまり表情を見ることができなかったのですが
クレヨンを持つと、ソープさんの誘導のもと
とても素敵な作品を描き始めたのです。
一心不乱に、ものすごい集中力です。
子どもたちの進行具合を見ていたソープさんも
彼女が生み出すものに注目し
「大樹、見てみろ、彼女は素晴らしい才能を持っている」
そのことを私に伝えました。
ここでその作品をお見せすることができないのが残念ですが
とても美しい色彩感覚でした。
あとで関係者から話を聞いてみると、その子は幼少期より
ソープさんの過去と、同じような体験をしていたことがわかりました。
当時のソープさんのように、障害を抱えていることによる困難さから
「おまえなんかいなくなっちゃえ!」
とか
「なんでそんなこともできないんだ」
という言葉による暴力を周囲から度々受けていました。
とてもつらかったと思います。
その子は言葉のコミュニケーションが苦手でしたが
ある日、自分の心を絵で表現するように勧めてくれる人がいました。
そこから彼女の表現は始まりました。
ワークショップの作品を見て、とても美しい心を見せてもらいました。
ものすごくピュアでした。
ソープさんはいいます。
「そもそも障害などというものはなく、
それは大人が勝手に決めつけているだけだ」
その通りで、私たちは皆どこか不完全な存在であり
そのバランスは人それぞれです。
ソープさんはワークショップが終わったあと親御さんも呼び
一緒にアドバイスをしていました。
「どの子も素晴らしかったが、特に君には感動した。
ぜひこの才能をもっと伸ばしてほしい。
なぜあなたたちにこのことをわざわざ伝えたかったのか。
それは私が君と同じ歳くらいのとき、
もしこんなことを言ってくれる人が周りにいたら、
ぼくはどんなに救われただろうと思ったからなんだ」
その言葉を聞いた少女がにっこりと笑った姿が印象的でした。
ソープさんは、今でも幼少期のつらい体験が
フラッシュバックとしてよみがえり
怒りで震えが止まらなくなるときがあるそうです。
その多くは、大人からの偏見だったようです。
彼はそのエネルギーを創作に転化し、数多くの名作を生み出しています。
人は他人をけなしたり、貶めたりしがちです。
それは、実は自分を傷つけていることに他なりません
(最近の科学でもわかってきています)。
そのことを親がもっと子どもに伝えられたら・・・
「それは間違ったことだよ」
ということを。
子どもは誰でも
それぞれが特別なギフトを持って生まれてきています。
親はそのギフトを発見し
どんどん伸ばしてあげることが大事ではないでしょうか。
私たちは、未来に向けてもっと変わらなければいけませんね。